夏草や兵どもが夢の跡 ~乗鞍レースレポ~

「夏草や兵どもが夢の跡…」

レース途中で、私の乗鞍への挑戦は終わりました…

先頭集団から千切れて行く中…
苦しくて苦しくて意識が朦朧としていた。

踏み止めてしばらく経ち…
ようやく心肺が落ち着き始めた時に…
私の心に浮かんだのは、この言葉でした。

夏草や兵どもが夢の跡…

先ほどまで戦っていたのに…
千切れた瞬間に、それは遠い過去のような…
そんな感覚でした。

不思議な感覚でした。
生まれて初めて経験する感覚…
視覚以外の感覚が絶たれたような…
ペダルを回しているのに、世界が止まっているように感じました。

レースのことを記載するべきか…
何も語らずに終えるべきか…
最後まで悩みました。

でも、やっぱり…
たくさんの人達が、何故「51位」という順位だったのか…
疑問に思われたと思います。

私は…
応援して頂いている方達に対し、報告するというケジメが必要だと思いました。

よって、詳細をブログに記載致します。

情熱全開で乗鞍に挑んだ兼松大和の想いを綴りました。

ご興味があれば、ご覧頂ければ幸いです。

このレースレポを見る前に…
レース前日に記載したブログ後悔だけはしたくない!!
レース前日のことを記載したブログ全日本マウンテンサイクリングIN乗鞍 2018 ~前日~
をご覧頂ければ、一連の取り組みや流れが分かるかと思います。
少し長いですが…
一読頂いてから、このレースレポをお読み頂ければ、この乗鞍にかけて来た私の取り組みが理解して頂けるかと思います。

2018年8月26日 レース当日

3時に起床する。
布団に入って寝てから、アラームが鳴るまで一切起きなかった。
レース前に、こんなにも熟睡出来たのは久しぶりだ。
毎日4時に起きるよう習慣づけしていたので、ぐっすり眠った後の3時起きは、全く問題なかった。
かなりスッキリした目覚めで、そのまま温泉に行って身体を温めて、一汗かいておいた。
入浴後に、お馴染みのIgnameオイルでマッサージして、筋の状態を確認する。
筋のこわばりなどもないし、脚も軽いし、浮腫みも全くなし。
良い仕上がりだ!

上機嫌のまま、朝食を摂る。

できるだけ重量を減らしたくて、栄養補助食品のゼリー2つ・スニッカーズ・おはぎ1つ・野菜ジュースを摂取した。
レースまでに消化吸収されて、体内で水分を保持して重量増にならないように気をつけた。

ここまで気にするのは、今回が初めてである。

どれぐらいの量を摂取すれば、どれぐらいパワーが維持できるのか?事前に確認しているので、この量で摂取し過ぎなぐらいの量である。
1時間程度のレースでは、血中と筋と肝臓に蓄えられている栄養で十分まかない切れるぐらいのエネルギーしか消費しない。
当日の食事より、前日までの調整の方が遥かに重要なのです。
だから、少量の食物で十分です。
突き詰めれば、エナジージェルを4つぐらい摂取するぐらいで良いのだろうけど…食欲が満たされた感覚がパワー発揮にも影響を与えるので、おはぎを1つを追加したのでした。

4時過ぎに、アップの準備に取り掛かる。
かなり早い時間帯にアップの準備を行うのだが、焦りたくないので、時間に余裕をもって行動することにしていた。

アップの予定は…
「固定ローラーで30分~40分使って、レース時にアタックが掛かった際の心拍数まで無理なく上昇させる。そして、レース仕様にホイールを変更して、ギアの変速確認を行い、実走で軽く脚を回して、感触を確認する。」という感じをイメージしていた。

4時30分ぐらいよりアップを開始する。
前日まで悩んでいたレースウエアだが、SUNVOLTのSLジャージにしたので、アップはProfitワンピースで行った。
アップは、パワータップG3のむラボホイールで、パワーと心拍を見ながら、ジワリジワリと負荷を上げて行く。
かなり集中して、丁寧に丁寧にペダリングを行い、脚の感触を確かめる。

田村監督が様子を見に来てくれていたが、私が集中しているので声をかけずに、遠くから写真だけ撮影して頂けた。


この写真から分かるように、かなり身体は絞れているし、ワンピースのフィット感が堪らなく好きだ。
今までは、ヒルクライムの全てのレースでこのProfitワンピースを着用してきたのだ!
しかし、乗鞍当日の気温は高く、陽射しも強そうなので、軽量で清涼感の優れたSLジャージにした。

ローラーのメニューは、以下の内容☆
10分軽く脚を回して、筋をほぐす。
180Wから1分ごとに20Wずつ負荷を上げて、340Wで一度終了し、5分ダウン。
この時点で、かなり脚が軽いし、340Wでもゼロゼロ息が切れないし、汗はしっかり出ているし、心拍はレース強度の160ぐらいまで上昇したので、アップはすでに成功だ!
ダウン後に、225Wから1分ごとに25Wずつ負荷を上げて、325Wの後に、30秒ダッシュを入れて、刺激入れは終了。
ダッシュしたので、少しだけ太腿の張りを覚えたが、当たり前の範囲だし、かなり調子が良い。
心拍が100回以下になるまで、ダウンを行い、アップを終了した。

自転車をそのまま放置して、軽量化を図る!

ここまでやるかっ!?という感じだが、起床後に普通に排便していたが、残っている可能性のあるものを全て出したかった。
少しでも軽く…少しでも…


考え得る最高の状態にしたかったのだ!

無事に軽量化に成功し、そのまま温泉へ。
温泉内で身体をストレッチして、入浴後にIgnameのオールシーズンアップオイルとbreathを塗って、レース用ジャージに着替えた。

そこそこ発汗したので、医療用の経口補水液を摂取し、カフェインとエナジージェルを摂取しておいた。
入浴後のオイルマッサージで、少し足底が攣りそうだったので、ナトリウムとカリウムも一緒に摂取した。

そして、レース仕様にホイールを交換し、変速の再チェックを行い、靴を履こうとすると、やはり足底と足趾が攣りそうな気配を感じるので、シロに治療してもらった。

「大丈夫!攣らない!行ける!」と田村監督が鼓舞してくれていた。
実際に、補給が効いたのか、監督の声掛けでメンタルが上向いたのか、その後攣る気配もなくなり、レースでも攣ることはなかった。

TeamGreenRoadの仲間と拳で挨拶し、試走による機材チェックと軽いアップを行った。
やはり調子が良い!脚が軽い!パワーが漲っている!!
絶好調で挑めていることに、とても満足だし、ワクワクして楽しみだった。

スタート地点に向かい、選手や応援に来て頂いた方々に挨拶する。

ここで伊藤透コーチとご挨拶。初めてお会いした。
私のピーキングをお手伝い頂いたので、私の状況は良く把握されている。
少しだけ会話を行い、データ上ではベストを出せることを再確認。
自覚的な調子と他覚的な調子が合致しているので、ベストな状態だと思えた!
コーチと話をして、さらに自信を持つことが出来た!

これが伊藤コーチのブログです。
かなり勉強になるので、いつも参考にさせて頂いているのだ。
良ければ、トレーニングの視点を増やすべくご覧下さい☆
サイクリスト/トライアスリート専門フィジカルコーチ 伊藤透のブログ

そして、選手整列場所で並ぶ。
万全で挑んでいるので、心に何の不安もない。
昨年は、レース1週前より体調を崩し、期待に応えることが出来ない重圧でペシャンコに圧し潰されそうであった。

しかし、今年は違った!!
本当に何の不安もない!
身体も機材も完璧だったので、事前にやり残したことは何もない。

心の内に闘志をメラメラと燃やしつつ、至って冷静であるように振舞った。

大会アナウンスでコールされて、手を挙げてスタート地点へ移動する。

この写真のフロントに取り付けているゼッケンを見て欲しい。
出来るだけ空気抵抗を減らすために、試行錯誤して取り付けました。
とことんこだわって、最高の状態を目指しています。
何回か表現していますが、意味があるとかないとか…そんなことはどうでも良い!
自分自身が「最高だ!」と思える状態で、このレースを走りたいだけです。
このゼッケンの影響で1秒も変わらないかもしれないけど、それでも私には意味があるのです。

photoby伊藤透

レース機材は、今更お伝えする必要もないだろうけど…以下の通りです。

フレーム:FOCUS イザルコマックス
コンポーネント:SRAM RED eTap(プーリーをカーボンドライジャパンのビッグプーリーへ変更)
フロントギア:SRAM RED 34シングル 手作りチェーンキャッチャー付き
リアギア:SRAM RED 11-28
ブレーキ:KCNC
ペダル:MAVIC ゼリウムかな!?
ホイール:のむラボ5号
タイヤ:Vittoria コルサスピード
シューズ:LAKE CX301
インソール:SOLESTAR BLACK
ウエア:SUNVOLT S-RIDE SLジャージ(上下)
ヘルメット:OGKカブト
重量:5.46kg

そして、レーススタート!

至って普通にスタートして、至って普通に時間が過ぎる。
全くキツサ何て感じないし、不安がない。
サイクリングしながら三本滝まであっという間に来た。
息は何一つ切れていない。

やはり昨年とは違い、余裕である。
ペースが遅いと思ったが、ニコの背中の発汗量や他の選手の息の粗さを見ると、私は余力十分だし、やれる気しかしなかった。
三本滝を過ぎると勾配がきつくなるので、ここから少しずつセレクションが始まる。
位置取りが悪いと無駄に踏まなければならないことがあるので、ジワジワ前に上がって行った。
だいたい10番前後をキープする。

三本滝の前後で、一度だけナカジを発見した。
とても真剣な顔で走っていて、何故だか笑いそうになった!w
誰よりも一緒に時間を共にし、練習してきた相棒だ!
同じクラスで、同じ時間を共有できていることが嬉しかった。

前では誰かが逃げているが、まったく興味もないし、逃げれば良いと思っていた。
今日の足なら、本気で踏めばいつでも追いつける自信があった。

ロープウェイを過ぎてしばらくして時計を確認したら、23分を経過していた。
「残り3分の1以下だ!」と気を引き締めたのを覚えている。

気温が高く、汗をたくさんかいている選手が多い。
私も汗をかいているが、SLジャージがかなり涼しい。
SLジャージを選択して正解だと思った。
しかし…背中が太陽の暑さを感じる。
「やはり、紫外線には弱いのだなぁ~」と思った。

そう!レース中にそんなことを考えるぐらいに余裕だった。

 

 

話は少し逸れるが…

事前インタビューでも答えたように、注意すべきは3名のみ。
森本さん・ニコ・俊介!!!
この3名の動き以外は、全てスルーすると心に誓っていた。
(予想通りに、結果は1.2.3位はこの3名だ!)

私の今年の取り組みは、弱点克服だ。
短時間の出力が極端に弱く、ゴール前まで残っても、勝負に絡めない…
おそらく、ニコには勝てるが、森本さんと俊介には絶対に勝てない。
よって、FTPは維持しつつ、短時間のパワーアップを狙った練習をヤマカツ練で仲間の力を借りて行っていた。
ヤマカツメンバーは、総合的に強いメンバーだし、特に短時間に強い人が多い傾向にある。

パワーデータを披露しようと思っていたのだが…
「実数を披露するのは、あまりよくない…」ということなので、昨年の乗鞍との相対値のデータだけを紹介しておく。

2017年乗鞍 体重56kg
2018年乗鞍 体重57.5㎏(実際は57kgだと思われるが、測っていないので目標値の57.5kgで計算している)

直近1ヶ月のデータで比較すると、パワーウェイトレシオで、5秒パワーは0.47倍↑、1分パワー1.09倍↑、5分パワー0.11倍↑、20分パワー0.19倍↓という結果だ。
伊藤透コーチに解析して頂いているので、間違いない!

昨年は調子を崩して力を発揮できていない状況で56分台で走れて4位だった。
今年は、伊藤さんにピーキングのアドバイスを頂き、実際に何度も記載しているように、7月からのトレーニングの疲労を初めて抜いており、絶好調で挑めているので、サンプリングしているデータより20分パワーは発揮できるだろうし、明らかに弱点克服が出来ている。
特に、勝負となるであろう1分パワーは狙った通りにアップしている。

作戦は至って簡単だ。
上記3名の逃げだけは容認せず、ラスト60秒~90秒で死ぬ気でもがく。
インターバル耐性もかなり付いているので、位ヶ原を過ぎた辺りで脚に余裕があるのであれば、30秒ダッシュなどのインターバルを仕掛けて、相手を振るい落とす。

これだけだ。
勝負どころの位ヶ原までは、何としても省エネで走り、力を温存しておきたかった。

 

 

レースに話を戻します。

上記作戦からも、3名の動きは常に視界に入れているし、十分余裕を持って走っていた。
この調子なら、確実に位ヶ原までに千切れることはないだろうから、作戦通りに動こうと考えていた。

いつ振りだろうか?これだけ走れているのは???

レース途中なのに、とても嬉しかった☆
ここまで取り組んで来たことが、しっかりと表現できる乗鞍という大舞台で走れていることが嬉しかった。

少し周りを見ると、勾配が緩くなっているロープウェイを過ぎた辺りなのに、中切れ気味に千切れかけている選手が多いし、この後の勾配が上がる箇所で千切れて行くだろうと予測した。
スピードに乗って、勾配が緩い区間を走り抜ける。
私は一番右側を走っており、スピードに乗ったまま左カーブを集団のまま曲がって行った。

すると…左側の選手が膨らんでくる!!
おいっ!!!っと叫んでしまったが、どうすることも出来ない…
ブレーキを掛けるも、コーナーに侵入している最中だったので減速できず…
ロードレースでもないし、速度域も低いのに、何を膨らんでんねん!!って感じだが、接触を防ぐために私も外に膨らむしかなかった…

まさかのシクロクロスだ…
ガチャガチャガチャ!!バキバキバキ!!!
コースアウトして落ち葉と木くずを踏み散らかしながら、舗装路に戻る。
かなり減速してしまうも、転倒せずにコースに復帰する。
ほんの一瞬の出来事だった。

少し離れてしまった先頭集団をダンシングで追いかける!
ギアがおかしい…
ガチャ!ガチャ!と勝手にトップやローに移動する。
スプロケットを見ると、木が挟まっていた!

変速を何度か繰り返していると、変速が元に戻って、正常に機能した。
一安心。
この時にダンシングして、追いつくのにかなり脚を使った感じがした。
初めて息が切れた。

先頭集団に復帰する。
人数は10名前後だった。
私は先頭集団の最後方にいた。

勾配がきつくなる。

 

辛い…

 

脚が悲鳴を上げだす…

時計を見ると30分だった。

レースは残り半分!!!

 

重い…

 

さっきまでの好調が嘘のように、まさにブレーカーをOFFに切られたかのようにペダルに力を込めても進まない…

ヤバイ!いきなりレッドゾーンに入って来た…

何とか喰らい付く。。。

時計を見たら1分しか経過していなかった。

少し距離が開くが、頑張って踏んで追いつく。

 

しかし…辛い…

 

何故だ!?なんでこんなに辛い?
過去乗鞍を何度も走っているが、標高が高くなったからといって息苦しさを感じたことなんてなかったのに…

また先頭集団から離れてしまう…

こんな所で千切れるわけには行かない!!

思いっきり踏む!L5~L6で踏んでいる感覚…
練習での1分ダッシュのインターバルをしている感じで辛かった…

 

そして…

 

完全に出し切ってしまい、オーバーヒート…

 

無残に千切れました。

 

 

 

千切れてしまったら、嘘のように集団が遠のく…

 

 

世界が止まりました。
何とも言えない気持ちだった。
力を込めても、綺麗にペダルを回しても、私のエネルギーは推進力とならなかった…

終わった…

終わったのです…

最高の状態で挑んで、完全に燃え尽きました!

ゴールまで待つことなく、全てを出し切りました。

乗鞍ヒルクライムの頂点に立つ!という夢は、儚く消えました。

しばらく世界が止まっており、思考だけが働いた。
その時に浮かんだのは…
期待してくれた人達…
応援してくれた人達…
仲間の顔だった。

そして、離れていく集団を見て「ニコ…取れよ…」と、力なく呟いた。

 

 

満足だった。
最高に仕上げて、見事に散ったのです。
まさかこんな所で千切れてしまうなんて信じられず、悔しかったけど、後悔の念は何も無かった。
100%出し切って、100%やり切ったのだ!

心拍が落ち着いて来て、周りの世界が動き始めました。

「夏草や兵どもが夢の跡…」

戦っていたのが遠い昔のように感じました。
何とも言えない、表現できない気持ちでした。

おそらく35分前後か!?

バイクの撮影車に、千切れて力なく尽き果てた姿を取られている事に気付いた。
後ろから、たくさんの選手が追い抜いて行った。

「自分に勝ちましょう!」
「嘘でしょ!?」
「こんな所でくすぶってないで!!」
「トラブルですか??」
たくさんの選手に声をかけられた。
抜いた後に、何度か見返されたりもした。

それぐらい意外だったのでしょう。
自分でも意外でした。
間違いなく、最高の状態だったから…

原因を考えようとしたが、思考することを意図的に止めた。
そんな事はどうでも良い。
もう終わったんだ!

たくさんの選手に声を掛けてもらえたけど、頑張って踏む気は微塵も起こらなかった。

 

「もう全力で走って燃え尽きたんだよ。力及ばずだった…。後は、この最高の舞台の乗鞍を、全身で感じて、記憶に残すことだけだ。」

最高に綺麗だった。
暖かい陽射し、青々とした空、澄んだ空気、深い緑と荒れた大地、雲海も見え、自然の偉大さを感じることしか出来なかった。
とても清々しい気持ちだった。

 

すると…中治が来た。

「兼松さん!!!」と声を掛けてくれた。

中治は何も聞かなかった。
やはり1番理解してくれている。

「出し切って満足やわ。後は、この乗鞍を楽しむだけや!」と伝えた。

「こんな事滅多にないから、最後まで一緒に行きましょう!」と、追い抜かずに並走して、一緒に乗鞍を感じてくれた。

中治!ありがとうなっ!!

ゴールが近づいて来た。

応援者が「えっ!?兼松さん!?何で!?」と言っていた。
かなりたくさんの人が期待してくれていたし、誰も惨敗するなんて想像もしなかったのだと、改めて思った。

「皆さん兼松さんを撮りたいでしょうから、僕が山側に行きます!」と、中治が配慮してくれた。

ハシケンさんがダンシングして笑顔で話しかけてくれた。
サドルが取れたらしい…
何とも切ないな…
でも、笑っている!
笑顔が素敵だと思った。

ヤマカツ練で一緒に頑張っているパーマ君も追いついて来て、少し会話して、追い抜いて行った。
何か会話したけど、覚えていない。

2人の順番が逆かな?
どっちが先だったか覚えていない。

 

 

ゴールが見えてきた。
私の夢の舞台が終わろうとしている。
情熱を注いで、全力で取り組んで、素敵な思い出をくれて、成長させてくれた夢舞台の乗鞍!!

少し胸が熱くなった。

中治に「俺…ゴール地点で、乗鞍に敬意を評して降りて挨拶したいから…」と伝えた。

「分かりました!」と中治が返事した。

 

 

そして、ゴール地点へ来て、ゴール前で自転車を降りた。

涙が出そうだった…

歩いてゴールラインに向かうと、ハシケンさんが沿道に居て、右手を差し伸べてくれた!!
ハシケンさんとは、年代別で競い合ってきた良きライバルだ!
ハシケンさんに負けじと頑張った頃が懐かしい。

ハシケンさんと「ガシッ!」と右手同士を握り合って、目を合わせた。


(ハシケンさんと握手しているシーンです!)

 

ありがとう!ハシケンさん!
やはり涙が出そうだった…

 

ゴールラインまで歩いて行き、一礼した。

「ありがとうございました。」と…
ただそれだけを言いました。

 

涙を堪えて、笑顔で乗鞍のゴールラインを通過した。
泣きそうに笑うとは、こういうことを言うのだろう。

 

言葉にならない…

やり切った満足感でいっぱいだった。
レース結果は、求めたものとは違ったので悔しいが、取り組んで来た過程を振り返れば満たされる自分がいた。
悔しいけど、後悔はない!

 

 

自転車にまたがって、荷物の受け渡し場所に移動する。
自転車に乗った際に違和感を感じたが、特に気にしなかった。

荷物の受け渡し場所では、たくさんの選手がレース結果や展開などについて話をしていた。
ニコは、ダメだったらしい…
俊介が見事に、森本さんとニコに勝ったらしい。

インタビューされている上位入賞者の姿を見ても、悔しさは沸いて来なかった。
例年なら悔しさが込み上げてくるのだが…

「俺は、やり切ったし、出し切ったのだ。そして、乗鞍への挑戦が終わったのだ。」
そう心の中で寂しく感じながら思った。

周りの選手達がレース展開の話をしていたが、頭の中に入ってこなかった。

ただの傍観者でした。

優勝した俊介に、一点の曇りもない素直な気持ちで「おめでとう!」と心より伝えている自分が居た。

そして、ナカジと荷物を探し、仲間のゴールを待った。

たくさんの人達に写真撮影や握手を求められました。
その際に「どうでしたか?」と必ず聞かれるのですが、結果を伝えるのが、恥ずかしい自分がいました。

自転車もたくさん撮影して頂けた。
自転車を移動させる時に、またしても違和感を感じたが、この時も特に気にしなかった。

過去最低の結果だった。
ヒルクライムレースに出て、表彰を逃したのは、この数年間ない。
確実に着に絡み、表彰台には立っていたのだ。

しかし、最後の集大成と意気込んで挑んだこのレースでは、大敗しました。
イメージした通りに走れず、突き付けられた現実は厳しいものでした。

仲間が揃い、皆で記念撮影を行いました。

それぞれの想いを持って、挑んだ乗鞍でした。

 

そして、下山しようとした際に、異変に気付きました。

 

頭が真っ白になりました。

 

 

 

 

後輪が…パンクしている…

 

 

 

 

シーラントを入れているから、何とか抜けきらずに保っていましたが、手で押さえたら凹むぐらいの空気しか入ってなかった。

レース展開とかどうでも良かったのですが…
急にレース中の出来事を思い出そうと脳が思考を始めた。

あれだ!あのカーブで膨らんで舗装路から逸脱して、シクロクロスした時だ!
あの後から急に重くなり、突然辛くなり、千切れた!!
あの時にパンクしていたのだ!

シーラントが固まったが、空気圧が低くなってしまったのだ…

トラブルだった…

 

 

千切れた後は、真っ直ぐ進むのみでグリップを利かせるようなことはなかったし、ダンシングもしなかった。
アドレナリンが出過ぎて、そして力尽きて思考しなかったので、気づかなかった。
ベコベコではないが、低圧になっていた…

ゴール後に再乗車した際の違和感、撮影時に自転車を移動させた際の違和感…
原因はパンクでした。

絶好調で挑んだと思っていた感覚は間違っていなかったのだ。

笑うしかなかった。
ヒルクライムレースで初めてのシクロクロス!w
何度も出ているレースで初めてコースアウト!w

自分の位置取り、膨らんだ選手、色々と思考しだしたが、またしても強制的に思考するのを止めた。

 

シーラントのお陰で、最後まで走り切れたのだ。
途中で自転車を下りなければならなかったら、きっと満足感はなかったはずだ。

「やり切った!」「100%出し切った!」と思った気持ちに嘘はない。
原因追及や反省や対策などは、もういい…
これが最後と決めて取り組んだのだから…

 

 

下山前に、小型ポンプを借りて空気を入れた。
小型ポンプの空気の入らないこと…何回もポンピングした。

完全に空気が入りきらない状態で、下山した。
かなりリスキーだった!
シクロクロスのレースに出ているような感じだ。

直線なら気にならないのだが、カーブになると途端にタイヤがズレそうな感覚になる。
位ヶ原山荘でポンプを借りて、入れ直したら、穴が開通してしまった!w
高圧には耐えれないようだ…

再度固まるのを待って、ゆっくり丁寧に下山した。

 

よく見れば、フレームはシーラントで汚れていた…

ギアには、木くずなのか落ち葉なのか、噛み込んでいた!

 

パンク…

 

パンク…

 

下山後、自転車を片付けて、応援者の3名に報告。
努めて明るく振舞い、努めて笑うようにした。

完璧に仕上がった私の身体…
「もう終わった!」と思っていたのに、自分の手足を見ると「まだまだ走れる!」と言っているように、血管が浮き上がっていた。
みんなで、誰が一番綺麗に血管を撮影できるか撮り合った!w

 

そして…


TwitterやFacebookに使用するために、写真撮影をお願いした。

レース速報で私の名前が上位に入らないのは、やはり驚きと戸惑いがあるようなので、元気だということだけをお知らせしようと思いました。

そして、風呂に入るために、旅館内に入った。

「あっ!?ゼッケンナンバーは、004の「死」を意味する番号だっ!w」と、シロとうめに言って笑いを取った。

記念に撮影して~!!!とお願いした一枚がこの写真です。

そして、荷物を置いている大部屋に移動し、荷物整理を行った。

チームメイトそれぞれが荷物を片付けたり、風呂に行ったりしていた。

 

皆が部屋から居なくなったら、突然涙が溢れだした…

 

さっきまで笑っていたのに、さっきまで「やり切った!」と言っていたのに、さっきまで…

 

涙が止まらなかった。

 

悔しかった…

 

持っている能力を発揮することが出来なかったのだと思うと、悔しくて悔しくて仕方がなかった。

 

あれだけ努力したのに…
あれだけ周りを期待させたのに…
最後なのに…

ボロボロ涙が溢れて止まらない…

仲間が部屋に出入りしてきた。
帽子を深く被って、下を向いて、荷物を片付けた。
でも、涙を止めることは出来なかった。

誰も何も言わなかった。

 

ただ、ただ…泣いた。

 

私の隣に荷物を置いていたナカジが、隣に来て荷物を片付けながら…
「そりゃ~悔しいですよね…」と一言だけ呟いた。

何分泣いていたのだろう…

最後と決め、最大の努力を行い、最高の状態で挑んだレース。
力及ばずに負けたと思っていたのが、パンクだと分かってから、悔しさという感情しか生まれなかった。

 

悔しくて…

 

悔しくて…

 

悔しくて…

 

悔しくて…

 

悔しくて…

 

悔しくて…

 

涙が止まらなかった。

 

機材トラブルも実力のうち!
運も実力のうち!
結果を求めて挑んで、出て来た答えがパンクの「51位」という結果なのだ!
優勝以外は、全て同じなので、順位はどうでも良い…

努力しても全てが報われるものではないと思っている。

結果を求めるなら、報われる努力が必要なのだ!!

報われる努力…

 

レース後、お世話になっている方にのみパンクの事実をお伝えしました。
「謝ることではないです!」「お疲れ様でした。」「その取り組みにたくさんの人が感動するんです。」「それだけ真剣に取り組めたことが素晴らしい!」などなど…たくさんの労いの言葉を頂きました。

昨年とは違い、今年は過剰な期待やプレッシャーを感じませんでした。
昨年のレース後のブログで、たくさんの方に気を遣わせてしまいました。
その結果、プレッシャーにならないように配慮頂けていることがとても伝わりました。
感謝です。

 

今年は、ずっと自転車の活動が楽しめています。
Jプロツアー、ヒルクライム、ファンライド、トレーニング、全てが楽しい☆

この乗鞍に向けての一連の取り組みも、とても楽しめました。
結果は、レース後に顔がぐちゃぐちゃになるぐらいに泣くというものですが…w

 

 

どのようにこの記事を終わりにしようか、最後までまとまりませんでした。
ただ感情のまま、ありのまま感じたことを、家のノートPCに向かって打ち続けました。
打ちこ込んでは消して…打ち込んでは消して…

そろそろPCに向かうのを止めようかと思います。
感情が溢れてきて、まとまりません。
いまだに、乗鞍当日のことを思い出すと涙が出て来ます。

「悔いは残るかもしれないが…後悔だけはしたくない!」
そう思って取り組んで来ました。
悔いも後悔も同じような意味だが…このニュアンスが伝わりますでしょうか???

レースを終えて、悔しくて悔しく悔しくて…
泣きじゃくりました。
悔いは、想像していたよりも、たくさん残りました。
しかし、悔いても、悔いても、どうしようもありません。
時は、戻すことが出来ないのです。

 

しかし、後悔はしていません。
取り組んで来たことに、後悔はない!
仕事と家庭と趣味のバランスを保ち、努力して来た過程は、認めてあげたいと思います。

やれる事はやる!
レースで勝てなかったけど、自分には勝てたと思っています。

レースを終えて、今振り返ってみても…

兼松大和は…
胸を張って
「全力で最大限頑張った!!!」
と言えます!!

泣けるぐらい本気で、真剣に向き合って、取り組んで来たのです。
これは、私の大きい大きい財産となりました。
一連の取り組みを通して「成長した!得る物がたくさんあった!」と言い切れます!

 

 

乗鞍!という大きい大きい頂を目指して取り組んできました。
その過程では、様々な人と出会い、様々な経験をし、様々な感情が生まれました。
本気で取り組んで来て良かった!と、心から思います。

 

 

やはり…この記事をどのように締めくくったら良いのか分かりません。

乗鞍…

最後と決めて挑んだ乗鞍…

 

兼松大和という人物に、多大なる良い影響を与えてくれてありがとう!

 

兼松大和を心底応援してくれた皆さん!
本当にありがとうございました。

 

優勝!という形で終えることが出来ませんでしたが、これもまた人生です!
この経験を糧にして、次のステージへ進み、成長して行きます!

 

本当にありがとうございました。

 

本当に…
ありがとうございました。

 

 

変わり続ける人で在りたい!!!

Changingman 兼松大和

10 件のコメント

  • 凄く感動しました!一字一句漏らさずに拝読させて頂きました。目頭が熱くなりのを覚えました。兼松さんの比ではありませんが、私も3年前の47歳の時から富士ヒルに出場し、90分切りを目指して毎年トレーニングをしてきました。
    職業柄、年明けから6月までが繁忙期のため、限られた時間の中で工夫をしながら自分なりに取り組んで来ました。勿論兼松さんの記事なども拝読させて頂きました。今年90分を切れば最後にしようと覚悟を決めて臨みましたが、9秒足りず目標達成には至りませんでした。
    しかし、今回兼松さんのブログを拝見し、またチャレンジしたい気持ちになりました。来年4回目、51歳になりますが、更に工夫を凝らしてトレーニングを積みたいと思います。これかもブログやFBを楽しみにしております。お身体を大切にしながら頑張ってください!応援しております!

    • 想いのこもったコメントありがとうございます。
      チャレンジすることは、いろんな意味で、たくさんの副産物を生みだしてくれるので、良いことですよね☆
      是非、工夫を凝らしてトレーニングを積んで下さい。
      応援ありがとうございます。
      これからもどうぞよろしくお願い致します。

  • はじめまして
    兵庫県在住43歳の男です。
    初めて兼松さんを生で見たのは神河ヒルクライムの時でした。
    それまでは、YouTubeでしか観たことがありませんでした。(笑)
    神河での兼松さんの走りの速さに驚き、気が付けば兼松さんのファンになっていました。
    過去のブログも殆ど読ませて頂きましたし、ブログが更新させるのも楽しみです。
    そして、今回もブログが更新されるのをずっと待ってました。
    やっぱり何故51位だったのか気になっていたからです。
    原因はパンクだったんですね。
    原因がわかった瞬間、正直僕は安心しました。
    もしかしたら、レース中に兼松さんご自身に何かあったのかとずっと心配していたからです。
    兼松さんが元気!
    だったらそれでいいです。
    これからも応援しています。
    あっ、中治さんのことも応援しています(笑)いいキャラされてますよね!
    では。

    • 神河ヒルクライムでお会いしているのですね☆
      blog等たくさん見て頂いているようで、嬉しいです。
      ありがとうございます。
      そして、ご心配して頂きありがとうございます。
      ただのパンクです。
      だから、元気モリモリで、ガツガツ食べて、ブクブク太っています!(笑)
      これらかもどうぞよろしくお願い致します。

      あっ!愛されキャラの相棒ナカジの応援も、宜しくお願い致します。w

    • メッセージ性の高いコメントありがとうございます☆
      〇には何が入るのでしょうか!?
      人それぞれ、どんな言葉を入れても良いようにして頂いているのですね。
      前向きに頑張って行きます!
      興味を持って頂き、そして、お教え頂きありがとうございます。
      もう一度じっくり見直してみます。

  • いつも楽しみに読ませていただいてます。前日にA4版写真にサインを頂き、ブログにまで登場させてもらいありがとうございます。待った甲斐がありました。さすが役者は登場が遅い!(笑
    実は昨年のブログにはスタート前の兼松さんの背中の向こう側にも映っていました。2年連続の出演ありがとうございます。
    私は兼松ファンの1人としてウェア、シューズ、リカバリー品等を真似しまくりました!勝手に師匠と呼んでます。
    今後も応援、真似っ子していきますのでよろしくお願いします。

    • おおおぉぉぉx~!!!!
      A4写真のお方ですかっ!!!
      ありがとうございます。
      会場に入った瞬間に来られたので、驚きました。
      大変お待たせして申し訳ございませんでした。。。

      そして、2年連続出演ですかっ!w
      ありがとうございます。
      師匠と呼ばれるには、まだまだ未熟ですが、そう言って頂けて嬉しいです。
      今後ともどうぞよろしくお願い致します。

  • 兼松さん、初めまして^ ^
    いつもブログ楽しく拝見しております。今回の準備編から並々ならぬ意識が感じられ、フルタイムワーカーなのにスゲーなぁと思ってました。
    今回のブログを見て、齢48にしてもらい泣きでした^ ^
    私自身、2回目の乗鞍でしたが、直前に風邪をひいてしまい、昨年よりタイムを落としてしまいました。しかし、この大会に向けて、自分なりに練習してきた結果なので、満足しております。
    兼松さんとは比較にならないくらいの練習量と準備ですが、来年に向け新たにトレーニングを組み立てるつもりです。こういう気持ちになれるのも、兼松さんをはじめ、多くのヒルクライマーがブログを発信してくれるからだと思います。諦めないヒトたちの多いこと!
    これからもこのブログを楽しみにしております。

    • サワダ様、初めまして☆
      コメント頂きありがとうございます。
      そして、長文お読み頂きありがとうございました。
      直前の体調不良は残念でしたね…来年にその想いをぶつけて下さい!!
      引き続き、適当なツイッターやブログですが、どうぞよろしくお願い致します。

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